大腸憩室炎
大腸憩室炎

大腸憩室炎とは、大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみ(憩室)に炎症や感染が起こる病気です。
憩室そのものは無症状で経過することが多いものの、便や細菌がたまることで炎症が生じると、腹痛や発熱などの症状が現れます。
発症部位には年齢による特徴があり、60歳未満では右側結腸に多く、60歳以上では左側結腸に多いとされています。
また、左側結腸の憩室炎の方が重症化しやすい傾向が知られています。
大腸憩室炎は、憩室内に便が停滞し細菌が増殖することで炎症が起こると考えられています。
その背景には、食生活や生活習慣、薬剤など複数の要因が関与しています。
食事の面では、食物繊維の摂取が少なく赤身肉中心の食生活は発症リスクを高める一方、果物や穀物に含まれる食物繊維は予防的に働くことが報告されています。
さらに肥満や排便習慣の異常、慢性的な炎症状態も関与するとされています。
薬剤では、NSAIDs(鎮痛薬)、ステロイド、オピオイド、更年期のホルモン療法などがリスクを上昇させることが知られており、これらが腸管の防御機能に影響することで発症しやすくなると考えられています。
症状は炎症の部位によって異なりますが、典型的には腹痛と発熱が主な症状です。
左側結腸に炎症がある場合は左下腹部痛、右側の場合は右下腹部痛として現れることが多く、これに加えて下痢などを伴うことがあります。
炎症が進行すると、膿瘍形成や穿孔をきたし、腹膜炎へ進展することもあるため、痛みが強い場合や発熱が持続する場合には注意が必要です。
大腸憩室炎の診断には画像検査が非常に重要であり、CT検査と腹部超音波検査はいずれも有用な検査とされています。
CT検査は、炎症の範囲や重症度、膿瘍や穿孔といった合併症の有無を詳細に評価できるため、現在最も広く用いられている検査です。
一方で、腹部超音波検査も大腸壁の肥厚や周囲の炎症所見、膿瘍の有無を評価することができ、被ばくがないという利点があります。
そのため、特に繰り返し評価が必要な場合や、妊婦・若年者などでは重要な選択肢となります。
施設や患者様の状態に応じて、これらの検査を適切に使い分けて診断を行います。
加えて、血液検査も重要な検査の一つです。
血液検査では白血球数やCRPといった炎症反応を確認することで、体内の炎症の程度を把握することができます。
これらの値は重症度の判断や治療効果の評価にも役立ちます。
また、脱水の有無や腎機能の状態を確認するためにも血液検査が行われます。
なお、急性期には大腸内視鏡検査は穿孔のリスクがあるため通常は行いませんが、炎症が改善した後には大腸がんを除外する目的で内視鏡検査を行うことが推奨されています。
大腸憩室炎と大腸がんとの関連が示唆されているため、この確認は非常に重要です。
治療は重症度によって異なります。
膿瘍や穿孔を伴わない軽症例で、全身状態が安定し経口摂取が可能な場合には外来での治療が可能です。
基本は腸管を安静に保つことと食事調整であり、大腸憩室症ガイドライン第2版(2026年)では必ずしも抗菌薬の投与は必要とされていません。
海外の報告では、抗菌薬の使用が合併症発症率や入院期間、手術率、再発率を改善しなかったとされています。
ただし、症状が持続または悪化する場合や、妊娠中、免疫力が低下している場合には抗菌薬の投与が推奨されます。
膿瘍を伴う場合にはその大きさに応じた対応が必要となります。
膿瘍が3cm以下であれば抗菌薬と腸管安静による保存的治療が行われますが、改善しない場合にはドレナージや手術が検討されます。
さらに、瘻孔形成や腸管狭窄を伴う場合、あるいは保存的治療で改善しない場合には大腸切除術が必要となることがあります。
大腸憩室炎は再発しやすい疾患であり、長期的な生活管理が重要です。
膿瘍や穿孔を伴わない症例でも、日本の報告では1年以内に5〜10%、5年で10〜20%程度が再発するとされています。
膿瘍を伴った場合はさらに再発率が高く、特に発症後1年以内の再発が多いことが知られています。
再発予防には食生活の改善が重要であり、食物繊維を意識的に摂取することが推奨されます。
また、肥満の改善や禁煙も重要です。
さらに、ごぼう茶の摂取が再発予防に関連する可能性も報告されています。
一方で、喫煙、肥満、脂質異常症、ステロイド使用などは再発のリスク因子とされており、これらの管理が再発予防につながります。
大腸憩室炎は比較的頻度の高い疾患ですが、重症化や再発のリスクがあるため、適切な診断と治療、そして再発予防が重要です。
特に、炎症が治まった後に大腸内視鏡検査を行い大腸がんを除外することは非常に重要なポイントです。
当院では、急な腹痛や、大腸憩室炎が疑われる場合、緊急での腹部エコー検査や血液検査を行い、迅速な診断を行います。
また、必要があれば、高次医療機関に紹介し、適切な検査と治療に繋ぎます。
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