脂肪肝・MASLD
脂肪肝・MASLD

脂肪肝とは、肝臓の細胞の5%以上に脂肪が蓄積した状態を指します。従来は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」およびその進行型である「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」という名称が用いられてきましたが、2023年にこれらの疾患概念は見直され、「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」および「MASH(その進行型)」へと変更されました。
この変更の背景には、「脂肪」や「アルコール」といった言葉による偏見(スティグマ)を避ける目的があります。MASLDは、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧といった代謝異常を背景に発症する脂肪肝を指し、より病態の本質を反映した名称となっています。
脂肪肝は初期には単なる脂肪の蓄積にとどまりますが、放置すると炎症が起こり(MASH)、さらに線維化が進行して肝硬変や肝がんに至る可能性があります。日本では成人の約4人に1人が該当するとされ、非常に頻度の高い疾患です。
MASLDの主な原因は、生活習慣の乱れによる代謝異常です。特に重要なのは、過剰なエネルギー摂取と運動不足による内臓脂肪の増加です。脂肪肝という名称から脂質の摂り過ぎが原因と思われがちですが、実際には糖質や炭水化物の過剰摂取も大きく関与します。余分な糖質は中性脂肪に変換され、肝臓に蓄積されるためです。
また、内臓脂肪が増えると炎症性サイトカインが分泌され、肝臓に炎症や酸化ストレスを引き起こし、病態を進行させます。このためMASLDはメタボリックシンドロームと強く関連しています。
さらに、遺伝的要因(PNPLA3遺伝子など)や腸内細菌の影響も指摘されており、日本では肥満でない方でも発症するケースが少なくありません。実際にMASLD患者の約20%は非肥満とされています。
MASLDの最大の特徴は、自覚症状がほとんどないことです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が進行しても症状が現れにくい臓器です。
そのため、多くの場合は健康診断の異常や腹部エコー検査で偶然見つかります。進行すると、倦怠感や易疲労感を感じることがありますが、これも特異的な症状ではありません。
さらに進行して肝硬変になると、腹水、黄疸、むくみなどの症状が出現し、日常生活に大きな影響を及ぼします。またMASLDは肝臓だけでなく全身の病気とも関連し、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患、さらにはさまざまながんのリスクも高めることが知られています。
MASLDの診断には、血液検査だけでなく画像検査が重要です。血液検査で肝機能が正常であっても脂肪肝は否定できないため、注意が必要です。
最も一般的な検査は腹部超音波検査(腹部エコー)で、脂肪が蓄積した肝臓は白く見える特徴があります。最近では脂肪の程度を数値化できる装置もあり、より正確な評価が可能になっています。
また、病気の進行度を評価するうえで重要なのが肝臓の線維化の程度です。FIB-4インデックスと呼ばれる指標は、年齢や血液データから簡便に算出でき、線維化のリスク評価に用いられます。必要に応じて、肝硬度を測定するエラストグラフィや、より詳細な検査が行われます。
肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などを有する方は、症状がなくても積極的に検査を受けることが重要です。
MASLDの治療の基本は生活習慣の改善です。特に体重管理が重要であり、体重の7%程度の減量で肝炎の改善、10%程度の減量で線維化の改善が期待されます。
食事では、過剰なカロリー摂取を避け、バランスの良い食事を心がけることが重要です。極端な糖質制限や脂質制限は推奨されておらず、継続可能な食事療法が大切です。
運動も重要で、週150分以上の有酸素運動が推奨されています。筋力トレーニングも併用することで代謝が改善し、脂肪肝の改善に寄与します。
現時点ではMASLD自体に対する保険適用の治療薬はありませんが、糖尿病や脂質異常症の治療薬の中には肝臓の脂肪や炎症を改善する効果が期待されるものもあります。そのため、併存する生活習慣病の適切な管理が重要です。
日本では成人の約25%が該当するとされ、非常に頻度の高い疾患です。多くは無症状のため、気づかずに進行しているケースも少なくありません。
放置はおすすめできません。脂肪肝は初期には症状がありませんが、進行すると肝炎や線維化を経て、肝硬変や肝がんに至る可能性があります。また心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも高まるため、早期からの対応が重要です。
はい、なります。MASLDはアルコールとは無関係に発症する脂肪肝であり、食生活や運動不足、代謝異常が主な原因です。
なります。日本では約20%が非肥満とされ、遺伝や体質、腸内環境などが関与していると考えられています。
肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧がある方、あるいは健康診断で肝機能異常を指摘された方は、症状がなくても腹部エコー検査を受けることをおすすめします。
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